AI動画ツールの「商用利用できるか」は、利用規約の条項を読めば大半が確定します。この記事は、Canva・Runway・NoLang・Geminiの該当条項そのものを並べたものです。
「どのツールが無料で商用利用できるか」という結論だけが必要なら、「無料で商用利用できるAI動画ツール」の答え|12ツールを4軸で確認したら、条件つきで3つだけ残ったのほうが早いです。こちらは条文側です。
4社を読み比べて分かったのは、日本語の解説記事がいちばん外しているのは「商用利用の可否」ではなく、その先にある権利許諾の条項だということでした。
4社の該当条項を1枚に並べる
| 生成物の権利 | 商用利用 | 事業者が持つ権利 | 素材・透かし | |
|---|---|---|---|---|
| Canva | 「you own your Output」 | 「for any lawful purpose」 | 記載を確認できず | ライセンス素材を含むと例外/C2PA除去は禁止 |
| Runway | 「does not claim ownership」 | 「does not restrict your commercial use」 | 入出力を学習利用(撤回不能・永久) | API利用時は「Powered by Runway」表示 |
| NoLang | 「利用者に帰属」(17条1項但書) | 「商用利用を含め、自由に二次利用」(17条10項) | 裁量で編集・改変・公開・複製(17条11項)/二次利用の差止請求権(17条10項但書) | 提供素材の権利は同社(17条13項) |
| Gemini | 動画生成は有料プラン(Google AI Plus 月額725円〜) | — | 可視透かしはオフ可/SynthID・C2PAは残る | |
Canva:所有できる。ただし「例外」が本体
As between you and Canva, and to the maximum extent permitted by applicable law, you retain your ownership rights to your Input, and you own your Output, except for any Output that modifies or incorporates Licensed Content (as defined in our Terms of Use) which is licensed to you as described below.
(あなたとCanvaの間では、適用法の許す最大限の範囲で、InputとOutputの所有権はあなたにあります。ただしライセンス対象素材を改変または取り込んだOutputは除き、それは後述のとおりライセンスされます)
Canva「AI Product Terms」2026年9月11日確認
「you own your Output」だけを引くと「Canvaは商用OK」で終わりますが、条文の重心は except 以下にあります。Canvaライブラリの素材を1点でも含めた時点で、その素材のライセンスが生成物に及びます。同じCanvaで作った動画でも、素材を使ったかどうかで結論が変わります。
利用範囲についてはこうです。
You may use your Output for any lawful purpose, provided that you comply with these terms and that you accept that any such use is at your own risk.
(本規約を守る限り適法な目的でOutputを利用できます。ただしその利用は自己責任であることに同意するものとします)
同上
あわせて、出力の一意性についても明記があります。他の利用者が似た出力を得ることがあり、あなたの所有権は他の利用者の出力には及びません。
「AI生成と明記する義務」は条文にない
禁止行為として書かれているのは、義務ではなく次の2つです。
Mislead anyone that the content generated by AI Products is human-generated;
Remove, alter, or disable any provenance or metadata tags from any AI-generated content, including but not limited to C2PA metadata(AI製品の生成物を人間が作ったと誤認させること/C2PAメタデータを含む来歴・メタデータタグを除去・改変・無効化すること)
同上
「常に明記せよ」ではなく「誤認させるな」。そして後者のメタデータ除去の禁止は、あまり語られていない条項です。C2PAを剥がす加工をパイプラインに入れていると、ここに抵触します。
Runway:商用は明示的に自由。問題は学習利用の条項
The Company does not claim ownership of any of your Inputs or Outputs. Subject to your compliance with the Agreement, the Company does not restrict your commercial use of your Outputs.
(当社は入力・出力の所有権を主張しません。本契約の遵守を条件として、当社は出力の商用利用を制限しません)
Runway「Terms of Use」4.4 2026年9月11日確認
「商用利用を制限しない」と正面から書かれています。日本語の解説記事にある「商用はStandardプラン以上」に対応する記述は、規約本文には見当たりませんでした。
※ここは限定して書きます。利用規約に見当たらなかったという事実であって、料金ページや個別の製品ドキュメントに条件がある可能性は残ります。無料枠では出力に透かしが入るという報告もあります。契約前にご自身で公式ページをご確認ください。
そして、同じ条項の続きが本題です。
you hereby grant to the Company a non-exclusive, irrevocable, perpetual, worldwide, royalty-free, fully paid, transferable, sublicensable right and license to use any Inputs and Outputs … in connection with … model training purposes.
(あなたは当社に対し、非独占的・撤回不能・永久・全世界・無償・譲渡可能・再許諾可能な権利を付与し、入力および出力をモデル学習の目的等に利用することを認めます)
同上
撤回不能・永久です。入力した素材も、出た成果物も対象になります。クライアントの未公開素材や社外秘を入れる運用は、商用可否ではなくこの条項で判断すべきところです。詳しくはAI動画ツールに入れた素材は学習に使われるのか|Runwayの規約4.4を原文で読むで扱っています。
APIで自社アプリに組み込む場合は別途、「Powered by Runway」の目立つ表示とrunway.comへのリンクが求められています。
NoLang:日本語の情報源は、両方向に間違っていた
NoLangについては、解説記事が正反対のことを書いています。
- 「CC-BY-SAライセンスで扱われ、クレジットを記載すれば商用利用が可能」
- 「権利はNoLang側が持っており、商用利用はできない」
規約(個人プラン・2026年3月30日改訂)を読むと、どちらも条文と合っていませんでした。
本サービスに関する特許権、著作権、意匠権、実用新案権、商標権等の知的財産権は当社又は権利者である第三者に帰属するものとし〔中略〕但し、生成コンテンツ及び生成スライドに関する知的財産権は利用者に帰属するものとします。
NoLang「利用規約(個人プラン)」第17条1項 2026年9月11日確認
利用者は、生成コンテンツ及び生成スライドを、商用利用を含め、自由に二次利用することができるものとします。但し、当社は、当社の合理的な判断により、利用者に対して当該二次利用の全部又は一部の中止又は差止めを求めることができるものとし、利用者は、当社からかかる要求を受けた場合には、速やかにこれに従うものとします。
同 第17条10項
知的財産権は利用者に帰属し、商用利用も明記されています。「商用利用できない」は誤りです。
CC BY-SAは「向き」が逆に説明されている
ではCC-BY-SAはどこから来たのか。条文にはこうあります。
利用者は、生成コンテンツ又は生成スライドを生成した時点で、当該生成コンテンツ又は生成スライドを各動画ページ又はスライドページの「コピーライト」欄に明示されるライセンス条件(以下「指定ライセンス」といいます。)に基づいて、当社に提供することに同意するものとします。指定ライセンスには、CC BY-SA、CC BY、またはその他の適切なライセンスが含まれる場合があります。
同 第17条7項
CC BY-SAは「利用者が生成物をNoLangに提供するときの条件」であって、「利用者が生成物を使うときの条件」ではありません。向きが逆に説明されています。「クレジットを書けば商用利用できる」という説明は、条文の構造と合っていません。
本当の注意点は、あまり語られていない3つの条項
| 条項 | 内容 |
|---|---|
| 17条8項 | 「動画公開設定: 公開」で作った生成コンテンツは、複製・編集・公衆送信・第三者への利用許諾を含めて同社が無償で利用できる |
| 17条11項 | 同社は生成コンテンツを裁量で編集・改変・公開・公衆送信・複製できる。利用者はそれに必要な権利を無償で許諾する |
| 17条12項 | 個人プランの生成スライドは、同社が第三者への利用許諾を含めて二次利用できる |
「商用利用できるか」だけを見ると、ここを全部読み飛ばします。公開設定で作った動画は同社が自由に使えますし、二次利用の差止めを求められたら従う義務があります。クライアントワークで使うなら、商用可否より先に確認すべき条項です。
提供素材(アバター・背景画像・アイコン・効果音・BGM)の権利は同社または第三者に帰属し、サービス利用に必要な範囲を超えて使うことはできません(17条13項)。Canvaのライセンス素材と同じ構造です。
Gemini:可視透かしは消せる。消せないものは残る
長らく「Geminiの生成物には透かしが入り除去できない」と説明されてきましたが、Googleは2026年8月、GeminiとFlowに可視ウォーターマークをオフにできる設定を追加しました。
| 種類 | 2026年9月時点 |
|---|---|
| 目に見える透かし | 設定でオフにできる |
| SynthID(不可視の電子透かし) | 設定に関わらず埋め込まれる |
| C2PAメタデータ | 同上 |
「消せない」も「消せる」も半分しか合っていません。納品物の見た目の問題は解消し、AI生成物としての検出可能性は維持されている、という状態です。
また、Geminiアプリの無料プランは動画生成が対象外で、有料プラン(Google AI Plus・月額725円〜)が必要です。詳しくはGeminiの動画生成に無料枠はない|料金・解像度・40秒の条件を公式で確認したに書いています。
4社を読み比べて見えた共通点
- 「生成物はあなたのもの」と書いてある会社ほど、例外条項が長い。CanvaもNoLangも、帰属を認めたうえで素材・公開設定・事業者の利用権で条件を付けています
- メタデータの扱いが条文に入り始めている。CanvaはC2PA除去を明示的に禁止し、GeminiはSynthIDとC2PAを消せない仕様にしています。「透かしを消せるか」は、もう可視透かしだけの話ではありません
- 商用可否より、事業者側が取る権利のほうが実務に効く。Runwayの学習利用(撤回不能・永久)、NoLangの17条8項・11項。いずれも「商用利用OK」という要約からは完全に抜け落ちます
規約を自分で読むときの検索語
全文を読む必要はありません。ブラウザの検索で次の語を当てると、上の論点にはほぼ届きます。
| 英語の規約 | 日本語の規約 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| own / ownership | 帰属 | 生成物が誰のものか |
| commercial | 商用 | 商用利用の可否 |
| training | 学習 | 入力・出力が学習に使われるか |
| irrevocable / perpetual | 撤回/無償/許諾 | 事業者が取る権利の強さ |
| watermark / C2PA | 透かし | 透かしとメタデータの扱い |
| except / subject to | 但し | 例外条項。ここがいちばん重要 |
とくに「但し」と except は必ず見てください。今回の4社でも、結論をひっくり返していたのはすべて例外側の文でした。
日本語版が用意されていても正文が英語であることが多い点、規約と料金ページが別文書で食い違うことがある点も、あわせて注意が必要です。
まとめ
- Canva:原文は「you own your Output」。ただしライセンス素材を含むと例外。C2PAメタデータの除去は禁止行為
- Runway:「商用利用を制限しない」と明記。注意点は入出力の学習利用に撤回不能・永久で同意する条項
- NoLang:知的財産権は利用者に帰属し、商用利用も可。「商用利用できない」という説明は誤り
- NoLangのCC BY-SAは、利用者が同社に提供するときの条件。利用者が使うときの条件ではなく、向きが逆に説明されている
- NoLangの本当の注意点は17条8項・10項但書・11項。公開設定の動画は同社が無償で利用でき、二次利用の差止めを求められたら従う
- Gemini:可視透かしは2026年8月からオフ可。SynthIDとC2PAは残る
※ この記事は2026年9月11日に確認した各社の利用規約に基づく整理であり、法的助言ではありません。規約は予告なく変更されます(Googleの2026年8月の変更が実例です)。重要な案件では、必ずご自身で最新の規約原文を確認し、専門家にご相談ください。
出典(すべて2026年9月11日に確認)
- Canva「AI Product Terms」 生成物の所有権、ライセンス素材の例外、禁止行為(誤認・C2PA除去)
- Runway「Terms of Use」 4.4(所有権・商用利用・学習利用のライセンス)、1(Powered by Runway表示)。旧 runwayml.com から移動しています
- NoLang「利用規約(個人プラン)」 2026年3月30日改訂。第17条(知的財産権及び使用許諾)
- Googleの可視ウォーターマーク設定変更(2026年8月)。SynthID・C2PAの扱い
